事例)根抵当権の被担保債権の範囲

 Y(信用保証協会)は平成5年6月、Aとの間で同人が三和銀行から600万円を借り入れるに付き信用保証委託契約を締結し、三和銀行との間でAの三和銀行に対する600万円の債務を保証する旨約した。

 BはYに対し、Aが前記信用保証委託契約に基づきYに対して負担する一切の債務を連帯保証する旨約した(本件連帯保証契約)。

 Bは平成7年6月、相互信用金庫から1300万円を借り入れるに付きYとの間で信用保証委託契約を締結し、さらにYとの間で所有していた建物に債権の範囲を「保証委託取引による一切の債権」とする根抵当権設定契約を締結し、その旨登記がなされた。

 Yは、Aとの間の信用保証委託契約に基づき、平成10年9月、三和銀行に対し、保証債務の履行として、703万円を支払い、Aに対して同額の求償権を取得した(本件求償債権)。

 Bは、平成13年9月までに相互信用金庫からの借入金債務をすべて弁済した。

 Xは、売買により本件建物の所有権を取得し、Yに対し所有権に基づく妨害排除請求権に基づき、本件根抵当権設定登記の抹消を求めた。Yは、本件連帯保証契約に基づいてYがBに対して有する本件求償債権に係る保証債権が本件根抵当権の被担保債権に含まれるとして争った。Xの主張は認められるか。

 なお、本件訴訟中にXが元本確定請求したことにより元本は確定している。

【参照条文】 (根抵当権)

第三百九十八条の二  抵当権は、設定行為で定めるところにより、一定の範囲に属する不特定の債権を極度額の限度において担保するためにも設定することができる。

2  前項の規定による抵当権(以下「根抵当権」という。)の担保すべき不特定の債権の範囲は、債務者との特定の継続的取引契約によって生ずるものその他債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して、定めなければならない。

3  特定の原因に基づいて債務者との間に継続して生ずる債権又は手形上若しくは小切手上の請求権は、前項の規定にかかわらず、根抵当権の担保すべき債権とすることができる。

【解答】 認められる。

(最高裁平成19年7月5日第一小法廷判決)

(判例タイムズ1253号・P.114)

(理由)

 民法398条の2第2項は、根抵当権の担保すべき債権の範囲は、債務者との一定の種類の取引によって生ずるものに限定して定めなければならない旨規定しており、前記事実関係によれば、本件根抵当権は、同項に基づき、担保すべき債権の範囲を根抵当債務者であるBとの「保証委託取引」によって生ずるものに限定するのであることが明らかである。そして、信用保証協会と根抵当債務者との保証委託取引とは、信用保証協会が根抵当債務者の依頼を受けて同人を主債務者とする債務について保証人となること、それに伴って信用保証協会が根抵当債務者に対して委託を受けた保証人として求償権を取得すること等を主たる内容とする取引を指すものと理解され、根抵当債務者でない者が信用保証協会に対して負担する債務についての根抵当債務者の保証債務は、上記取引とは関係のないものと言わねばならない。

 なお、根抵当権の被担保債権の範囲につき、被担保債権の範囲を「信用金庫取引による債権」として設定された根抵当権の被担保債権には、信用金庫の第三者に対する債権を根抵当債務者が保証したことによる保証債権が含まれるとした最高裁判決がある。

あすか法律情報 平成20年1月号ー4

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— posted by infoaska at 03:10 pm  

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