事例) 単独搭乗を拒否された身体障害者の航空会社に対する損害賠償請求が認められなかった事例

 身体障害者であるXは、平成15年7月30日、関西空港で航空会社Yの運行するバンコク国際空港行きの航空機への単独搭乗を拒否され、同機に搭乗することができなかった。

 事情は以下の通りである。

Xは、本件搭乗を平成15年7月22日に旅行会社を通じて予約したが、その際、両上肢、両下肢に障害があって車椅子を利用すること、言語障害があること、同行者はなく単独搭乗を予定していることを旅行会社に伝えず、Yが事情を知ったのは出発の2時間前であった。

■拗匐の航空運送規約には次のような規定があった。

  第八条 運送の拒否及び制限

   第一項 運送拒否権

   航空運送人は、安全上の理由に基づく場合、又は、航空運送人が合理的な裁量によって以下の判断をした場合には、乗客又は乗客の手荷物の運送を拒否することができる。

(a) 略

(b) 行為、年齢又は精神的若しくは身体的に障害のある乗客が以下の場合

(1) 航空運送人による特別な援助を必要とする場合

     以下略

 Xは、Yの搭乗拒否は、旅客運送契約上の債務不履行、及び不法行為にあたるとして、Yに対する慰謝料の支払いを求めて訴訟提起した。Xの請求は認められるか。

【解答】 認められない。(控訴棄却・確定)

大阪高裁平成20年5月29日判決

判例時報 2024号20頁

(理由) 

 判決は、「安全上の理由」を否定した上で、Xに関し、トイレの使用、食事の介助に関して特別の援助が必要とは言えず、言語障害があるにしても注意深く聞けば相当程度その意味を理解でき、また、緊急時の脱出等の際の援助にしても高齢者や児童等とどれほどの差異があるか疑問である等として、「『特別の援助』を必要とする搭乗者であるとして控訴人の単独搭乗を拒否したことには、その根拠はなかったと言わざるを得ない」としたが、Yが事情を知ったのが出発2時間前であったこと等により、限られた情報と時間的余裕のない中で、Xに対する介助や緊急時における援助体制について不安を持ち、介助者の同行を求めるというきわめて慎重な態度をとったことは不合理に過ぎる判断であったとまでは言い難いとして、Xの請求を認めなかった。

 なお、原審は、「安全上の理由」、「特別の援助」を肯定してXの請求を棄却している。

あすか法律情報 平成21年2月号−1

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— posted by infoaska at 12:42 pm  

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